Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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絵に描いた餅
 即身とは想像と現実を融合することである。 より具体的に言えば、想像と現実を一致させることである。 だがこれを現実を主体にして行おうとすれば 「想像を現実に一致」 させようとして、その生き方は 「現実主義」 になってしまう。 逆に想像を主体に行おうとすれば 「現実を想像に一致」 させようとして、その生き方は 「夢想主義」 になってしまう。 いずれも即身は完成しない。 では想像を 「思い」 という言葉に置換したらどうであろう。 現実を 「こうしたい」 とする思いである。 その思いが強ければ現実は 「そうなる」 のではないか? それは多くの求道者が依って立つ精神である。
 空海は 「思う」 ことをさらに進めて、すでにして 「こうなっている」 と 「信じる」 ことに置換した。 これが 「仏に成ろうとした最澄」 と 「仏に成った空海」 の決定的な違いである。 空海はついに 「大いなる秘術」 を手に入れたのである。
 だがこれを実行するには強大な想像力が必要になる。 仏として生きるとは、仏に成った自分を揺るぎない実在性(リアリティー)をもって想像できてはじめて可能となる。 かくなる想像ができなければ即身は 「絵に描いた餅」 でしかないのである。

2020.09.18


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