Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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優雅なる異端
 世界から正義が失われようとしている。 まかり通るのは権力であって、現れるのはむき出しの欲望である。 流れを止めることはできるのか?
 失望することはない 「優雅なる異端」 の時代がやって来たのである。 優雅とは金に任せても贅沢三昧をすることではない。それは、愚かなことに荷担しないことであり、生きる意味がわかっていることであり、善と悪を見抜けることであり ・・ しかして、世の脅迫や恫喝に屈しない強靱な精神と動じない心をもっていることである。
 人にはその人だけの世界がある。 それはその人のものであって他の誰のものでもない。人はそれに気づかず他人の世界を羨み、それが得られぬことで不遇を嘆いている。人は自らに備わった 「固有の世界」 にしか生きることはできない。 優雅なる異端とはその固有の世界に生きることである。 その世界は独立していることをもって、誰からも奪われることはなく、自立していることをもって、守るべき法は自らが創ることができる。
 人は物質的存在であるとともに精神的存在でもある。 物質はちっぽけであっても精神は際限なく大きい。ときとして宇宙をも凌駕するほどである。 優雅なる異端を実践した空海の大いなる精神は片隅にあって尚、世界を動かし得たのである。
 何かを得ようとすれば何かを失うは世の常である。 全てが得られるわけではないが、全てが失われるわけでもない。 目指すは 「ゆるぎない自己」 の完結であって 「ゆるぎない生活」 の完成ではない。
 以下は優雅なる異端を貫いたブルース・リーの言葉である。
Don’t think, feel 考えるな、感じろ
何かについて考えすぎると、それを成し遂げることは到底不可能である。
パンチに予備動作を加えてはいけない。瞬時に打て。
私は自ら進んで人を傷つけようとは思わないし、たやすく傷つけられるつもりもない。
俺はお前のために生きているのではない。お前も俺のために生きているのではない。
勝つか負けるか、戦いの結果を予測することは大いなる間違いだ。
自然に任せていれば、ここぞという時にひらめく。
鉄則を学び、鉄則を実践し、やがて鉄則を忘れる。
形を捨てた時、人は全ての形を手に入れる。
スタイルを何も持たない時、人はあらゆるスタイルを持つことになる。

※)「優雅なる異端」は今を遡る20数年前、塩野七生の著作「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」から着想して創作したものである。
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷〜あらまし
 法王の息子というキリスト教世界での異端児でありながら、チェーザレは枢機卿にまで上り詰めた。しかし、その象徴である緋の衣を脱ぎ捨て、真の目標に向け進み始める。剣を手にした彼の野望は「イタリア統一」。父や縁戚フランス王の権威を背景に、自らの王国樹立のために権謀術数の限りを尽くした若者の鮮烈な生涯を描く。 「毒を盛る男」と断じた歴史の評価に対し「マキアヴェリズムの体現者」「行動の天才」という新しいチェーザレ像を提示した塩野七生の初期代表作。

2020.08.08


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