現代であればまだしも軍事体制下の当時、自由を標榜して逝った上原良司は希にみる青年であったといえる。自由は勝利し、権力主義全体主義の国家は一時的に隆盛であっても必ずや最後には敗れる事は明白だと断言、真理の普遍さは歴史が示したごとく未来永久に自由の偉大さを証明していくであろうと予断、自己の信念の正しかった事は祖国にとって恐るべき事であるとまで日本の行く末を危惧する心配り、若干22歳であったことを考えれば現代との隔世の感にほとほと恐懼してしまう。末尾に配された「明日は自由主義者が一人この世から去って行きます
彼の後姿は淋しいですが 心中満足で一杯です」に至ってはもはや論考する言葉さえ見いだすことができない。 唯一無二の 「心のありか」
をのちの世にのこし得た青年の姿は無窮の天空にかかって朽ちることなく煌めいている。
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