明治維新を経て近代国家として生まれ変わった極東の小国、日本。当時、世界は帝国主義の嵐が吹き荒れ、極東の端に位置するこの国にも西洋列強の脅威が迫っていた。だが逆境の中にあっても誕生したばかりのこの小国には亡国の悲愴さを吹き払う壮気があった。近代化を遂げ史上初めて「国民国家」となったこの国は、民族が一体となるその昂揚感に国民の端々まで列強に伍する強国への飛躍を夢見て邁進していたのである。
遡る100年余り前のことである。省みれば身の程知らずの時代であった。だがその子供のように無垢で純粋な 「壮気」 こそが、当時の日本人が抱いた希望や夢の本質であるとともに、精神的な美質であったに違いない。
それは今や多くの日本人が失ってしまった美しき心根であるとともに、依るべき 「心のありか」 なのである。
|