未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
自粛よりは検査を〜新たな数理モデルが語るもの
日本における新型コロナウイルスのPCR検査数の「少なさ」はかねてより諸外国から問題視されてきた。 諸外国の試算では、日本の感染者数は政府発表の1万5000人(5月8日、現在)をはるかに超える28万人〜70万人に及ぶとして、検査数を増やさないと 「パンデミックの終結」 は困難であると警告した。しかしながら日本政府は 「これでいいのだ」 とばかりに日本方式を自画自賛してきた。
そして今日。 九州大学の小田垣孝名誉教授(理論物理学)が構築した感染終息に向けた 「数理モデル」 を知るに及んで、「もやもやしていた疑念」が、目から鱗が落ちるかのように解消したのである。 その数理モデルは単純にして明快。 検査数を増やせば、政府が声高に唱え続けている 「人との接触機会を8割以下に」 という自粛対策を講じなくとも感染の封じ込めが可能であることを告げていた。
ちなみに、その数理モデルを使って新規感染者数が10分の1に減るのに要する日数を計算すると、検査数を現状に据え置いたままで、接触機会を8割削減した場合は23日、10割削減(ロックアウト状態)した場合は18日を必要とする。 他方、検査数を倍増した場合は、接触機会が5割減でも14日で達成、さらに検査数を4倍増にした場合は、接触機会をまったく削減しなくても8日で達成してしまう。
まさにこの数理モデルは冒頭で記した諸外国からの「検査数を増やさないと パンデミックの終結 は困難である」とする指摘(警告)の正当性を証明しているのである。 畢竟如何。 日本に必要であったのは 「自粛ではなく検査」 であったのである。
国は1日のPCR検査の能力を2万件まで拡充できるとしているが、実施数は最大9千件にとどまる。小田垣教授は「感染の兆候が体に一つでも表れた時点で検査して隔離することが有効だろう。接触機会を減らす対策はひとえに市民生活と経済を犠牲にする一方、検査と隔離のしくみの構築は政府の責任。その努力をせずに8割削減ばかりを強調するなら、それは国の責任放棄に等しい」と指摘している。
2020.05.08
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