未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
時は流れず
ニューヨーク・タイムズ紙は 「確信の終焉」 を論じたプリゴジンの著書 「混沌からの秩序」 をあまりに危険すぎるとして論評を差し控えた。 もし科学が確信をもたらすことができないのであれば、いったい 「何を信じたらよいのか?」 というのである。
おそらくプリゴジンは確信の終焉した時代における頼りどころは 「確率である」 と言いたかったのではあるまいか? それは 「事態はこうであるかもしれないし、こうでないかもしれない」 という確率で語られる世界である。 若き日に受けた 「エントロピー増大のトラウマ」 がめぐりめぐってかくこのような 「不確定な世界」 に私を導くとは想像だにしないことであった。 だがあの日のぼんやりとした半覚醒の思考は醒めたわけではなく。 いまだに漠として霞の中にある。
末尾に時間の非可逆性に対する私の見解(時は流れず)を付してこの項の結びとする。
過去・現在・未来と連結された 「線形時間」 は存在しない。 過去や未来は現在に含まれていて状況に応じて今の今である現在という実空間に 「実在として象出する」 ものである。 エントロピーが増大して世界が無秩序化に向かい事態が混乱し混沌化しようがそれは表層の相転移であって根底にある宇宙の内蔵秩序は依然としてゆらぐことはない。 (詳細はベストエッセイセレクションの 「
時は流れず
」 を参照願えれば幸いである)
2019.12.08
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