未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
混乱の増幅
エントロピー増大にともなう秩序から無秩序に向かう変化を説明するものとして次のような例えもある。 それは蟻がぎっしり詰まった缶をひとたび開けるとその蟻を収容するためにはさらに大きな缶が必要となるというものである。 缶を開けるとは 「事態が変化する」 ことを意味している。 つまり、缶を開ける度に蟻の数は増加して事態は混乱へと向かっていく。 エントロピーの増大である。
この展開をシュレジンガーの波動理論でとらえると缶を開けるとは波動方程式の波動関数の収縮を意味している。 波動関数の収縮とは新たな宇宙の発生における 「観測問題」 のことである。 事態は新たなものが観測される度に波動関数の収縮が引き起こされ 「新たな宇宙が発生」 するのである。 この過程を一気に還元すれば新たな観測が行われる度(缶が開けられる度)に新たな宇宙が発生するとともにエントロピーは増大していくことになる。
現代情報社会においては新たな観測にことかかない。 ともなって新たな宇宙は次々と発生してエントロピーは増大、世界は急激に無秩序化に向かっていく。 事態はますます曖昧に複雑になってカオス(混沌)は拡大していく。 エントロピーの増大速度が急速となれば時間の速度もまた比例して急速となってとどまるところを知らない状況へと至るであろう。
2019.12.02
copyright © Squarenet