Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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即身は心の内に
 釈迦が言ったという 「天上天下唯我独尊」 の真意は心の外にあるのではなく心の内にある。 即身は心の内に実現するものであって心の外に実現するものではない。 だが衆の多くは心の外に実現しようとする。 その即身は 「虚構の即身」 であって 「装った即身」 でしかない。 そのような即身はどこまで追求してみても本物の即身には到達しない。 本物の即身でなければ 「生きる糧」 とはならず 「生きる力」 は生まれない。
 空海が主唱した 「仏として生きる」 とは、この本物の即身のことである。 かくなる即身を確立した空海にとってみれば、もはや微塵の迷いもなかったであろう。 それ以降の空海の日々は仏として 「何ができるのか」 を想い 「それを実践する」 ことにのみ専念したはずである。 空海が唱えた 「真言(マントラ)」 とは、そのような即身を起動させるための 「起動スイッチ」 の役割をなしている。 ゆえに真言はただ声にだして 「唱えさえすれば」 事足りる。 同様に日々の修行として為される作務はただ身をもって 「業じさえすれば」 事足りる。
 空海が創始した真言密教は 「教義を確立」 させるためのものではなく、即身の働きと効果を 「実証し確認」 するためのものであったであろう。 そこには仏になろうとした最澄がその身に負った煩悶や苦悩はなかったであろう。 あったのは 「この世を生きる法悦」 だけであったであろう。 空海の 「大いなる秘術」 とは全身全霊を賭けてその即身を 「信じ切った」 ということにある。

2019.06.11


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