未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
右脳の達人への憧憬
人間の知能が考え得る科学的法則の大半が発見し尽くされた今、「科学は終焉した」 と言われている。 実のところ科学は終焉してしまったのであろうか?
畏敬する物理学者、リチャード・ファインマンは物理学をチェスに譬えて 「我々はいったん基本的なルールを覚えてしまっても、まだその帰結を永久に探求することができる」 と語っている。 さすがに 「右脳の達人」 であって、その着想は常人の発想をもっては遠く及ばない。 ファインマンの意味するところを私流に説明すると以下のようである。
たとえ将棋のルールが完成されたからといって将棋そのものが終わったわけではない。 それどころかそのルールを使って行われる戦いは永遠に尽きることがない。 戦っても戦っても新たな棋譜は次々と生み出され、新たな名人は途切れることなく登場する。
であれば、将棋のルールを科学の基本法則に置きかえ、そのルールを使った将棋戦を宇宙の探求に置きかえ、その論旨に 「等価原理」 を適用すれば、「科学の基本法則が発見され尽くされたからといって、宇宙の探求そのものが終わったわけではない」 という論理が導き出される。 つまり、科学は終焉したわけではないのである。
以上の論理は何も将棋やチェスや宇宙の探求に限ったことではなく普遍的に適用される。 例えば、「基本的なビジネスモデルが考え尽くされたからといって、ビジネスそのものが終わったわけではなく、そのビジネスモデルを使ったビジネスの営為は永遠に途切れることはない」 等々。 ファインマンの右脳から発せられる直観にはかくこのような普遍性が内蔵されている。 その比類無き威力の片鱗がここに垣間見える。
※)リチャード・フィリップス・ファインマン (1918年5月11日〜1988年2月15日)
アメリカ合衆国出身の物理学者。 経路積分や、素粒子の反応を図示化したファインマン・ダイアグラムの発案でも知られる。 1965年、量子電磁力学の発展に大きく寄与したことにより、ジュリアン・S・シュウィンガー、朝永振一郎とともにノーベル物理学賞を共同受賞した。
2019.05.05
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