Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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天の配剤〜お天道様が見てる
 個は全体に影響を及ぼし、全体もまた個に影響を及ぼす。 その影響の作用と反作用の多くが現代情報社会ではIT技術を駆使したインターネットを介して行われている。 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを使った情報の発信は今や誰もが自由に行える。 こうなると個が全体に及ぼす影響がどの程度有効かはわからない。 あるいは本人が思うほどの有効性はないのかもしれない。 なぜなら誰もが情報の発信のみに奔走していて受信にはそれほどの熱心さがないからである。
 例えて言えば、誰もいない大きな会場で必死になって話している講演者のようなものである。 リアルとしての講演会であれば誰もいない会場を認識することはできるが、バーチャルとしてのネット世界での講演会であってみれば、誰もいない会場を認識することはできない。 依って時として、このような 「ひとり芝居」 が永遠に続けられることにもなる。 いやいやSNSでは 「いいね」 のアイコン再生回数でそれは分かるでしょうということであろうが、誰もそのアイコンを実際に押すところを見ているわけではない。
 最近ではその虚しき 「ひとり芝居」 が発信者にも分かってきたせいか、発信する情報がより過激で刺激的なものになってきている。 確かにそのような情報は全体の注目するところとなることで大きな影響を与えるものとなろうが、その情報が全体にとってプラスの効果となるのかどうかは保証の限りではない。 多くはマイナスの効果として作用するであろう。 「世のため人のため」 として始められたIT技術が、今や逆方向に向かっているようにさえ観える。 互いが不信感の虜に陥り随所が悪意に満ちた社会などを期待していたわけではないのである。
 だが 「お天道様が見てる」 という究極の個と全体における 「作用と反作用」 の効果はIT技術があろうがなかろうがそう変わってはいないのではあるまいか。 個が全体に与える影響の度合いも、全体が個に与える度合いも、そう大きな違いはないはずである。 それが 「天の配剤」 というものである。

2019.03.21


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