国宝の縄文土偶である 「縄文のビーナスが出土した棚畑遺跡」
と 「仮面の女神が出土した中ッ原遺跡」 を訪れた日はうち続く猛暑日のさなかであった。 頭上の陽光は容赦なく照り続け額からは止めどなく汗が流れ落ちた。
遺跡には訪れる人影もなく蝉の声だけが静寂の空間にこだましている。 畢竟如何。 そのとき縄文の時空はめくるめく甦るのだ。 人工物は視界から去り、やがて原始の森が姿を現す。
列島にあった 1万2000年 に渡る悠久な時間の歯車がおもむろに回り始め、もろびとが囲む広場の中央では魅惑の ビーナス と
女神 が妖しく踊り出す。 漆黒の闇の中でかがり火は燃えさかり、豊饒に捧げる 祭り はいつ果てることもなく続いていく ・・ アバンギャルド
というのであれば縄文人ぐらい アバンギャルド な人々は他にそう多くはないであろう。 かくこのようにその自立した文化様式を変えることなく
1万2000年 に渡って守り続け得た 「強靱な人間力」 は奇蹟に値する。 それに引き換え、その後を引き継いだ管理社会が始まった弥生時代からいまだ
2200年 ほどしか経過していないのに様相は 「このありさま」 である。
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