Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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浮き世に遊ぶ〜曼荼羅の世界
 この世は毀誉褒貶の世界である。 偉大な人間であると胸を張ってみても、つまるところ「何の変哲もないひとりの人間である」ことには変わりはない。 時として勘違いした人が自分は特別な人間であると自己肥大化して「裸の王様」を演じる場合もあるが、しばらくすれば修正を余儀なくされ意気消沈の帰結に至るのが「この世の習い」である。
 農家の小倅から天下人にまで成り上がった豊臣秀吉でさえ、この世の去り際には次の辞世の句を遺している。
露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢
 また樽の中の聖人と言われた哲学者ディオゲネスがその樽の前を通りかかったアレキサンダー大王から「お前に地位でも財産でも名誉でもなんでも呉れてやる なにが望みか?」と問われた時。 「まことに恐れ入りますが そこをどいてください あなた様がそこにお立ちになっておられると 太陽の日差しが ここへ届きません」と答えたという。 ディオゲネスにしたら大王アレキサンダーも単なる 「ひとりの人間」 ではないかといいたかったのであろう。 英明なるアレキサンダーであってみれば当然にして「そのことを理解していた」であろうから苦笑いをしながらその場を立ち去ったにちがいない。
 古人曰く「この世は浮き世である」と、私は 「浮き世」 という言葉以上にこの世の核心をとらえた直観を他に見つけだすことができない。 浮き世とは万物事象が織りなす 「曼荼羅の世界」 である。 我々がその曼陀羅世界の「どこに生き」、「どこに遊ぶ」のか ・・ それは、この世に生まれた「ひとり」、「ひとり」に与えられた「自由な人生」の賜なのである。 毀誉褒貶の世界ではあってもこれだけは確かなことであろう。

2018.05.02


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