Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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警備ロボットの人道性
 テレビ画面では警備保障会社の広報担当者が警備ロボットの紹介をしている。 2020年に開催される東京オリンピックに備えて警備業務の拡充が急務であり、このままでは警備員の数が大幅に足りなくなるというのだ。 そこで登場したのが警備ロボットである。 自走車輪を備えた警備ロボットが決められた区画を巡回警備し不審者を映像認識して警告を発するとともに集中管理室にその旨を送信するというのである。
 だがいずれ、その警備ロボットは警告を発するだけでなく、罵詈雑言を浴びせて催涙ガスを噴射することになるであろうし、警棒を振り回すことになるであろうし、やがては腹の中から銃口が飛び出し散弾をぶっ放すことになるのかもしれない。 これでは不審者はたまったものではないなと「不謹慎な同情」をよせてしまう。
 ケビン・コスナーが演じた映画「ボディーガード」では繊細な人間の心をもった警備員の生き方を描いて感動を呼んだ。 そしてつい最近では、日本のテレビで放映された木村拓哉が演じた「BG〜身辺警護人〜」では警備にかたむける情熱と信頼と正義を描いて好評を博した。 これらの警備方法は警備ロボットの登場で様変わりしていくことであろう。 それは人間にとっていいことなのかどうか?
 様相は戦争で使用されるAI(人工知能)を搭載したロボット兵器の状況を考えれば理解されよう。 合理的で効率的ではあるかもしれないが 「人間が介在することなく人を瞬時に殺戮する」 ことの意味をいかなる倫理観をもってとらえたらいいのであろうか? 事の核心を直言すれば 「これらの方法は人道的と言えるのかどうか」 である。
 ロボットを相手に人道的か否かを問う時代がこようとは思ってもみなかったことである。 あるいは人間は今。 その存亡が危ぶまれる境界線上に立っているのかもしれない。 かって見たSF映画でのロボットが人間を襲撃してくるシーンが 「デジャブ(既視感)」 をともなって迫ってくる。

2018.04.10


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