Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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溶けていく明日
 次々と新たな文明を拓いてきた人類も ここにきて 明日の予測が立たなくなってしまったようである。
 宇宙のカオス化を探求する「複雑系」と呼ばれる科学は、エントロピー(ある種の曖昧量)が増大した社会の様相を解明すべくコンピュータを駆使して計算を試みてはきたものの、超高性能コンピュータをもってしても 「その混沌の増大」 に追いつくことができていない。
 その主たる原因が情報化を推進したコンピュータサイエンスであってみれば、その解決策は「大いなる自己矛盾」である。 混沌の解明に使用するコンピュータの性能を向上させればさせるほど、その向上に比例して混沌もまたさらに増大してしまうのである。
 解決はコンピュータの性能を低下させることであろうが 「見てしまったものを 見なかった」 とは言えないのであって、原子炉の核分裂反応のごとく 「ひとたび始まってしまう」 と抑えることは至難の業なのである。
 福島第1原発の炉心溶融事故の廃炉作業でさえ30年とも40年ともそれ以上とも言われているのが現状である。 カオス化した社会の明日の予測がかいもく立たないことは炉心溶融のごとく 「溶けていく明日」 の姿を暗示しているのか、それとも溶けゆくものとは、あるいは 「人類の脳髄そのもの」 なのであろうか?

2018.03.15


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