高度あげるよりも、位置を北に移動したほうが紅葉との遭遇には有効かと愚考、白馬村山麓から岩岳スキー場を経由、栂池高原まで北上した。栂池高原の麓に広がる閑散とした繁華街を突っ切って、栂池ゴンドラリフトのしらかば駅の横に位置する小さな池の畔にたどり着いたのは午後も4時近くであった。
池は「鐘の鳴る丘」と名付けられた中腹の丘陵地にあり、今年の6月にも来たところであった。その折りも同様であったが、ここに到着するのが、なぜかいつも夕刻の斜光の頃となってしまい、明るい映像が撮れないでいる。それに今日は、そのわずかな斜光さえも雲間の垣根越しとあってみれば、状況はさらに悪い。
鐘の鳴る丘の山腹に三脚を据えて、そのわずかな陽射しを待ち望むが、いっこうに事態は改善しない。ついには山腹の草間にすわりこんで待つうち、足元に咲いた小さな白い花に目がとまった。
風景を撮影するとは、遠くに目がいって、おうおうにして足元の小さな花などには、目がいかないものである。 可憐に咲いた白い花を見つめているうちに、その小さな花が、栂池高原の大自然と対峙して微塵もひけをとらず、誇りに満ちて屹立しているように見えてきた。
かって読んだ王陽明の「山奥で咲く花」と題された一章が思い出された。
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