未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
映画「君の名は」に想う(2)〜黄昏の諏訪湖
映画「君の名は」で主要モチーフとなっている隕石の落下で壊滅してしまう架空の町「糸守町」にある湖のモデルであるとされる諏訪湖で出逢った「聖地巡礼の人々」を2016年10月、私は諏訪湖を眼下にする立石公園でとらえている。それは映画公開後2ヶ月余りのことであった。その時のことを「信州つれづれ紀行 / 時空の旅」の中で以下のように書いている。
立石公園からの諏訪湖 / 長野県諏訪市上諏訪
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聖地巡礼
立石公園は諏訪湖を眺めるに最高のビュースポットである。その日の撮影を終えて霧ヶ峰高原から諏訪へ下る途上、その立石公園が映画「君の名は」の聖地巡礼(※)で賑わっていると聞いていた私は「ふと」立ち寄ってみる気になった。
うわさに違わず遠来からの若き巡礼者で公園の駐車場は満杯であった。しかもここからの夕陽を眺めるのが巡礼者の儀式のようであって、その刻を いまか いまかと 待っている。陽がまさに沈まんとする時刻に偶然に訪れた私などは ただ唖然として その巡礼者の群像を眺めるしかなかった。
彼らはバーチャルとしてのアニメーション描画を見たあとでリアルとしての現実の風景を見るためにこの地を訪れる。古い私などからすれば順番が逆のような気がするのであるが世のトレンドはこの順番なのであろう。だが湖面で反射した夕陽が彼らをシルエットで浮かびあがらせている様を眺めているうちに何とはなしに彼らの気持ちが少しは理解できたように思えた。
先日ようようにして映画「君の名は」を観る機会を得て諏訪湖に表象した意味を知った今は その時に彼らが眺めていた 黄昏に暮れる諏訪湖の風景の何たるかを 明瞭に理解することができる。 まさしく彼らは聖地の巡礼者であったのである。
※)聖地巡礼とは
聖地巡礼とは宗教において重要な意味を持つ聖地に赴く宗教的な行為であるが、転じてアニメや漫画などの作品において物語の舞台やモデルとなった場所やゆかりの地を「聖地」と呼んで実際にその地を訪れることを言う。
2018.01.03
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