私たちの隣席では 少々酩酊状態の青年たち3人が カラオケで気勢をあげていた。 その内の1人の歌唱に対し
宮原君が「君の歌は破綻していない」と言ったのである。 言われた当人は 目を丸くしていたが しばらくして まんざらでもない表情を浮かべた。
彼の歌は右にふらふら 左にふらふら 行きつ戻りつ あたかも断崖絶壁の稜線をかろうじて渡っているような危うさであったが 決して足はふみはずさないものであった。
さらにその乱調子が 歌唱に独特な情感を醸し出し いうなれば「聴かせる歌」となっていた。 それを宮原君は「君の歌は破綻していない」と評したのである。
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