Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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絶対的原点〜天上天下唯我独尊
 人がこの世を生きるための絶対的原点とは何であろうか?
 自らの外に広がる物質的な外的宇宙と内に広がる精神的な内的宇宙をいかに均衡させるかは情報化時代の全貌が見えてきた今、喫緊の重要課題になろうとしている。万物事象の変化速度が穏やであった「古(いにしえ)の世」の外的宇宙では内的宇宙に与える影響もまた応分に少なかったであろう。だが外的宇宙の変化速度が加速度的に上昇した現代では内的宇宙がその急激な変化に追随することができなくなってきている。
 外的宇宙はそんなことにおかまいなく自らの変化に合わせるよう内的宇宙に向かって「 ・・ ねばならない」を連呼して脅迫する。この状況を放置すれば、やがては内的宇宙を制御している精神そのものが脅迫に耐えきれずに崩壊してしまうであろう。かくなる脅迫を霧散させるには内的宇宙の源泉である精神を原点復帰させ「抑圧された意識」をリセットさせる必要がある。
 釈迦は誕生した直後に東西南北に七歩歩いて右手で天を指し左手で地を指して「天上天下唯我独尊」と言ったといわれる。内的宇宙をリセットさせるための「絶対的原点」としてこれ以上に相応しい原点を他に見いだすことはできない。
※)天上天下唯我独尊
 釈迦を尊崇する言葉であるがときとして曲解され「この世で一番尊いのは自分である なぜなら自分という存在はこの世に一人しかいないからである」という拡大解釈から「自己中心」とか「傍若無人」と同じ意味で使われてしまうことがある。真意は「自分という存在は誰にも変わることのできない人間として生まれていてこの命のままで尊い」ということである。この世での「唯一無二のかけがえのない自分」という自己存在の真意を知れば「他人と比較して傷つくことはないし 他人より優れたものがあったからといっておごり高ぶるものではない」ということに気づくことになる。
 また「東西南北に七歩歩いて ・・ 」のくだりでは、6より1多い「7」に意味がある。我々の生命は「六道」という迷いの世界を輪廻している。7歩歩むとはこの6つの迷界(苦の世界)から1歩進み出て離れることを意味し、人間に生まれた目的が「この六道を出離して真の幸福になることである」と暗示しているのである。

2017.10.01


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