※)もののあはれ
平安時代の王朝文学を知る上で重要な文学的、美的理念。 折に触れ、目に見、耳に聞くものごとに触発されて生ずるしみじみとした情趣や無常観的な哀愁。
苦悩にみちた王朝女性の心から生まれた生活理想であるとともに美的理念であるとされる。 日本文化における美意識や価値観に影響を与えた思想である。 江戸時代の国学者、本居宣長は「源氏物語」の本質を「もののあはれをしる」という一語に集約させ、もののあはれをしることは同時に「人の心をしる」ことであると説いて人間の心への深い洞察力を求めた。
宣長はもののあはれをしる「心そのものに美を見出した」のである。 またニーチェやキルケゴールの研究者として知られる和辻哲郎は宣長の説いた「もののあはれ」に触れて、もののあはれをしるという無常観的な哀愁の中には「永遠の根源的な思慕」あるいは「絶対者への依属の感情」が本質的に含まれていると述べている。
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