以下は蛇足であるが、漫画家の赤塚不二夫が導入した「これでいいのだ」という独自の判断基準についてふれておきたい。 「これでいいのだ」という判断基準は一見すると独善的で排他主義のようにみえるが、「あれかこれか」の判断基準が付帯している「あれかこれかにこだわる」という観念が欠如しているようにみえることでは異質であり、思考が停止しているようにみえることでは同質である。さらに「これでいいのだ」の観念を突き詰めていくと「あれでもこれでもいい」という統合的な判断基準に近づいていくようにもみえる。 そしてついには「これでいいのだ」という断言が、あるいは絶対矛盾的自己同一の「完成形」ではないかとさえ思えてくる。 しかしながら、その真意は導入者であった赤塚不二夫が天国へ旅立ってしまった今となっては、もはや永遠の謎となってしまった。
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