Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
Turn

刺激の臨界点
 人間が生きていくうえで刺激は必要であろうがその刺激にも限度はある。その臨界点に至れば飽和してしまう。いくら美味いものを食べようとしてもいつかは限界がくることは当然であろうし、いくら行きたいところがあったとしてもそのうち限界がくることもまた必然であろう。ましてかっての時代のようにその情報が制限されていた頃とくらべれば現代は無制限に膨大な情報が瞬時に提供されてしまう。刺激の限界はあっという間に臨界点に到達してしまう。さらなる刺激を求めても人間の思考能力にも限界があるわけで、おいそれとは新たな地平は拓かれない。
 現代人はそろそろ新たな刺激を求めようとするその姿勢を改めなくてはならない地点に到達してしまったのではあるまいか? その方向性の核心は刺激がなくて当然の生き方の模索である。美味いものがなくて当然、行きたいところがなくて当然の生き方である。現代の価値観に従えば「それでは何のために生きているのかわからない」ということになろうが、それこそがこれからの新たな価値観の本質なのである。

2017.05.19


copyright © Squarenet