若き日、彼は気むずかし屋で笑うことはなかった。そのため周囲との関係が思わしくなく孤高の日々をおくっていた。あるとき彼は考えた「人間として人間らしい顔とはどのような顔なのか?」という根源的な問いである。行き着いたのが「動物の中で笑うのは人間だけだ」という事実である。以来、彼は人間として人間らしい顔は「笑顔である」ことを信じて、周囲に向けて笑顔を投げかける。最初は引きつったような笑顔であったらしいが、周りが笑顔で返してくれるに及んで「心から笑える」ようになったという。そしてついに冒頭の言、「人間にとって最も美しい顔は笑顔だ」という究極に達した。それからは惜しみなく笑顔を振りまくことにしたというのである。
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