Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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カオス理論の旗手かく語りき〜真実よりは啓示を
 数学物理学者であるとともにカオスと複雑系の研究でも活躍したミッチェル・ファイゲンバウムは、第1010回「確信の終焉」で述べたイリヤ・プリゴジンと同様に物理学の「統一理論」には否定的である。
 統一理論の信奉者に向かって「統一理論が この世界を理解する唯一の方法だと 君が信じているならば その理論形式で どうやったら 頭の部分に毛が全部あつまっている君の姿を 予測できるというのか ・・ 私たちはごくわずかな手段しか持っていないのだ そんなものだけで 多くの難問を解くことなどできない ・・ 私は真実なんかには まったく関心がない 私はむしろ 物事について考える 私なりの方法があることを知りたいのだ」と語っている。
 それに対する周囲の反応は「彼は真実ではなく “ 啓示 ” を求めているのだ」と冷ややかであった。
 統一理論に見切りをつけたファイゲンバウムは、その後は研究を応用科学に転じ、最小限の空間誤差で最大限に美しく見える地図を自動的につくれるソフトウェアを開発するのに力を貸したり、合衆国の紙幣を偽造されにくくするために複写されるとぼけてしまうフラクタル構造を利用するアイデアを提案したりしている。
 今やカオス理論の旗手であったミッチェル・ファイゲンバウムにしてこの状況である。

2017.02.26


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