未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
羅針盤を失った難破船
ある者がかの者に「それはおかしい」と言う。 すると、かの者はある者に「これでいいのだ」と言う。 それを聞いた、ある者は「そうか、それでいいのか」と受け入れる。 今度は、かの者がある者に「それはおかしい」と言う。 すると、ある者はかの者に「これでいいのだ」と言う。 それを聞いた、かの者は「そうか、それでいいのか」と受け入れる。
第1010回
「確信の終焉」で描いたプリゴジンが予想するカオス化した社会の姿である。多様化した人生観や世界観を受け入れることを学んだ「確信が終焉した社会」とはこのようなものであろう。
誰もが自信をもてず、羅針盤を失った難破船のごとく、波間に漂っている。 これではたして、人類に生きる意味や希望があるといえるのか?
プリコジンは絶対的価値観から相対的価値観への思考転換を迫るが、ではいったい、我々に「いかに生きよ」というのか? 絶対的な統一理論への希望を捨てるとはそういうことである。
2017.02.17
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