植えられた3万本のツツジの開花を見ようと訪れた鳩吹公園はいまだその一部が咲き始めたところであった。伊那市街からは西方に位置し、木曽駒ヶ岳から派生した山塊の麓にこの公園はある。シンボルとなっている風車の形をした展望台からは南アルプスが望めるというのだが、今日は背後の山襞から降りてきた霧に覆われて何も見えない。あいにくの梅雨空とあっては訪れる人影を期待すべくもないが、清々しい冷気があたりの空間を満たし、自然の息吹は山峡にこだましている。撮影の途中で霧のように柔らかな雨が音もなく降ってきたが、「その風情や佳し」とそのまま撮り続けた。
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