佐久市立近代美術館がある駒場公園に隣接してこの牧場はある。かってこの美術館が収蔵する日本画家、平山郁夫の「仏教伝来」を見に来たのはいつのことであったであろうか。この絵に託した平山の強い思いを考えながら公園内を歩いていると、福島原子力発電所の放射能汚染事故との共時性に思い至った。今日、再びここへ来たのは無意識下にそのことがあったからに違いない。平山郁夫は戦時下、広島を襲った原爆で被爆、その後遺症で死をも覚悟するに至る。その中で一筋の光明を求めて描いたのが、玄奘三蔵をモデルにした「仏教伝来」であった。暗雲たれこめる空の下で見えざる放射能と闘っている東北被災地の人々の思いもまた、半世紀の時を越えて、当時の平山の思いと同じではなかろうか・・・。
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