未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
大芝公園 大芝湖 / 長野県上伊那郡南箕輪村
蜩(ひぐらし)交響楽団
「大芝高原みんなの森」には、全長約4.8kmのウォーキングロードがなだらかな傾斜地に備えられ、樹齢90年を超すアカマツの巨木が立ち並び、森林浴を行いながら、四季折々の草木や動植物を観察することができる。大芝湖は小さくはあっても美しい湖で、湖畔には「愛の鐘」が立っている。この鐘は伊豆西海岸の恋人岬にある愛の鐘と姉妹関係にある「ラブコールベル」で、好きな人の名を口にしながら鳴らすと恋が実るという。
森の駐車場に車を止めてドアをあけたとたん、頭上から蜩(ひぐらし)の集団が奏でる交響曲がフォルテシモで降ってきた。それはまるでマエストロ小澤征爾に指揮されているかのごとく一糸乱れなく、その後、斜光に照らされた昼下がりの湖畔を一周する間、とぎれることなく続いた。かたや訪問客といえば、それぞれがそれぞれに、今日の刹那を、時空間に刻みつけることに夢中であったのだが、その演奏は過不足なく、そこかしこに鳴り響いていたのである。
2011.7
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