未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
佐久平からの浅間山 / 長野県北佐久郡御代田町
佐久の草笛
佐久平から軽井沢に向かう途中、車を路側によせて撮った浅間山である。晴れてはいたが寒風が休耕地の上を吹き抜けている。ふと島崎藤村の「小諸なる古城のほとり」の詩情が思い浮かんだ。
小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
緑なす ( はこべ ) は萌えず 若草も藉 ( し ) くによしなし
しろがねの衾 ( ふすま ) の岡辺 日に溶けて淡雪流る
あたゝかき光はあれど 野に満つる香 ( かをり ) も知らず
浅くのみ春は霞みて 麦の色わづかに青し
旅人の群はいくつか 畠中の道を急ぎぬ
暮れ行けば浅間も見えず 歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む
藤村ならずとも、この雄大な浅間山を見上げる者は、かくなる詩情が彷彿とその胸中に去来するにちがいない。
2011.2
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