横川渓谷を遡る途中に、この日本最大級のかやぶきの屋根（高さ13メートル、横幅43メートル）を誇る「かやぶきの館」がある。レストラン、薬草の湯、宿泊棟などが集まる食と健康がテーマの観光施設で、併設のよりあい工房ではそば打ちや硯の製作、おやき作り、農業などさまざまな体験教室が開催される。

　季節がよければ緑豊かな自然の山懐にかこまれた桃源郷のような里なのであろうが、厳寒の冬とあってはあたりはひっそりとし閑寂の風情が漂っている。ただ驚いたことに、裏手の斜面に鄙には稀な立派な「能舞台」が雪庭を前に泰然とひかえていた。この地に「能文化」を招来した人の心根やいかに・・・ただただ春の雪解けをまっているようである。