竜が水を吐くように清水が岩の上を流れ落ちるところから名付けられた「吐竜の滝」は、八ヶ岳から派生した川俣川渓谷に渡された小海線の鉄橋を頭上に仰ぐ位置にあり、ときおり通過する2両編成の車窓には突如出現した景観に驚喜し、手を振る乗客の表情も見ることができる。落差10m、幅15mの滝水が岩間から絹糸のように流れ落ちている。最近はやりの「パワースポット」としても紹介されているとみえ、そこかしこに遊山の人影があった。言われるまでもなく、深閑とした渓谷に響く滝音を聞きながらたたずむだけで、心は原始に回帰し、体は天然に同化していくようであった。
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