大峰高原の七色大カエデを観賞しているとき麓から高音のエンジン音がとぎれることなく響いていた。何ごとかと谷底を俯瞰する位置まで移動して見下ろしてみると樹間にサーキットが望まれた。このような山間にサーキットがあるなど、とんと聞いたことがなく、まるで「桃源郷」にでもある「幻のサーキット」のように思われた。帰路、記憶した方角をたよりに車を走らせ、行きつ戻りつはあったが、どうやら行き着くことができた。コースを爆走する若者たちは世の「喧噪」などどこ吹く風、自らがあげる「噪音」に酔い、驚くほどの無心さで、刹那の刻の中を、全身に風をうけて、走り抜けていたのである。とてものこと山上の紅葉どころではなかったのである。
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