未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
信州つれづれ紀行 / 時空の旅
松原湖 / 長野県南佐久郡小海町
湖愁
小海町高原美術館から山道を少し下ると突如として左手に湖が登場した。松原湖である。3度ほどは来ているが、この位置関係にあったのかと初めて気づかされ、美術館での余韻をかって寄ってみることにして湖畔に車を駐めた。午後の陽はすでに傾き湖岸に人影はなかったが、ぶらりとするうち、ふと一周する気が起こり歩きだしたのだが、思いの外の長い道のりであった。散策道は湖畔と山際の斜面を通って細く付けられ、この湖の来歴を語る原始の名残なのであろうか、斜面には巨大な岩石が今にも崩れ落ちそうにごろごろと横たわっていた。
ようようにしてボート乗り場にたどり着き、販売機のお茶で一服する頃には、陽はさらに西に傾き、柔らかい光が湖面にリフレクトし、黄昏をつげる涼やかな風が湖上を静かに渡っていた。私がいまだ小学生であった昭和36年頃、松島アキラという青年歌手が唄ってヒットした「湖愁」という歌謡曲があったが、あるいはこんな風景が似合う曲ではなかったか・・・とりとめもなく遠い記憶の彼方からそんな思いが甦ってきた。
2009.6
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