まだ2月というのに季節はずれの暖かさが訪れた信州安曇野である。このあたりはいまだ臼井吉見が描いた長編小説「安曇野」の風情がのこっている。夭折した彫刻家、荻原守衛(碌山)が、そして彼が死の直前に制作した最高傑作「女」のモデルであるとされる相馬黒光が思いに耽って歩いた田園風景である。また「春は名のみの風の寒さや・・・」で始まる唱歌「早春賦」は、作詞者の吉丸一昌が大正時代にここ安曇野を歩きながら、遅い安曇野の春を待ちわびる思いを詩にしたと言われている。仰ぎ見る雪を頂いたアルプス連山には陽光がきらめき、まさに春が来たようであるが、天気予報ではこの暖かさも数日で、再び厳しい冬に逆戻りとのことである。安曇野の春はいまだ遠いのである・・・。
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