春まだ浅い野尻湖である。この地で北信五岳と呼ばれる飯縄山、戸隠山、黒姫山 、妙高山、斑尾山の5つの独立峰にはいまだ残雪がしっかりとはりついている。北信濃の春はこれからなのである。すぐ近くに住んだ小林一茶の「これがまあ
終のすみかか 雪五尺」の句が思い浮かんだ。それにしても湖畔に人影が皆無なのはどうしたことか・・・。
思い起こせば(40年ほど昔にさかのぼることになろうか)、かってこの地は軽井沢と肩を並べる高級避暑地(リゾート)として、国内外からの観光客でおおいににぎわい、わが世の春を謳歌していたのである。湖畔の船着き場に立つドライブインの壁面は色あせ、赤白のストライプに装飾されたテラスフードにはほころびが目立つ。今やその中に往時の隆盛を偲ぶのみである。
だがしかし・・・時空はそうすてたものではなく、生々流転、いつの日か、かっての輝きが、再びめぐって来ることは過去の歴史が証明するところである。
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