Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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0 の発見〜数学の源泉とは
 数学的な0の概念は「偉大な発見」であると言われる。数学自体は人為的な発明であるから、あるいは「偉大な発明」と言った方が妥当かもしれない。 0を言葉で表せば「何もない状態」とでも言い得ようか。あるいはプラスでもマイナスでもない「中立の状態」とでも言い得よう。
 机の上に1冊の本が置かれている。 では本が1冊も置かれていないとき「0冊の本が置かれている」と表現する人はいるであろうか? だが数学的にはこれこそが妥当な表現である。0の意味は実にこの表現方法にこそ存在する。数学的概念とは、あるいはこのような抽象性を源泉にして発展したのかもしれない。 「本など何もない」と言ってしまっては数学の発展などありえなかったのではあるまいか。
 試みに0の数学的操作を「何もない」に置きかえて表現すると以下のようになる。
 「0を加えても引いても何も変化しない」は「何もないを加えても引いても何も変化しない」となり ・・ 「0を掛けると何もかもが0になる」は「何もないを掛けると何もかもが何もないになる」となり ・・ 「何かを0で割ることはできない」は「何かを何もないで割ることはできない」となり ・・ 「0を何乗しても0」は「何もないを何乗しても何もない」となり ・・ 「何を0乗しても1」は「何を何もない乗しても1」となる ・・・ 等々。
 0とは実に般若心経の「色即是空」ほどに難解である。 0の発見はインドの数学者によってなされたことを考えれば、あるいはかかる「空の思想」に密接に関係しているのかもしれない。

2016.07.25


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