未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
どこでもウィンドウ
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考
東京で仕事する息子が帰省した折、私が研究開発していた映像技術で制作された映像を見ながら「これは言うなれば “ どこでもウィンドウ ” だな・・」とつぶやいた。私はすでにその映像技術に「ビジョンウィンドウ / Vision Window」という呼び名を冠して商標登録(商標登録第4936518号)していた。
そのコンセプトは「窓の向こうに世界が見える」というもので、今は亡き世界的な版画家にして芥川賞作家、池田満寿夫が監督した「窓からローマが見える」という映画のタイトルから連想されたイメージを基にして発想されたものであった。
他方、息子がつぶやいた「どこでもウィンドウ」は、漫画「ドラえもん 」の「どこでもドア」から連想されたイメージが基となっていた。私は「このドア」が付帯した「超機能」のことは知ってはいたが、「ドラえもん」そのものの物語をそう熱心に読んだり見たりしたわけではなかった。おそらく漫画「ドラえもん」とともに育った息子の世代では「どこでもウィンドウ」こそが相応しい呼び名であったに違いない。
その息子も今では情報化社会の第一線で日夜奔走している。
そのことがあってしばらくして私はあることに気がついた。それは「ビジョンウィンドウ」という呼び名は「窓の機能」を説明するものであり、「どこでもウィンドウ」という呼び名は「窓の働き」を説明するものであるという互いの「意味の違い」についてである。我々の世代は物事を「機能で考える」ことを常としてきたのであるが、現代社会では物事を「働きで考える」ことが常なのかもしれない。そして現代情報社会とは、あるいはこの「機能」から「働き」への思考転換こそが「基本コンセプト(ベーシックコンセプト)」なのかもしれない。
息子がふとつぶやいた「これは言うなれば “ どこでもウィンドウ ” だな・・」のひとことがそのことを私に教えてくれたのである。
ここから そこへの
どこでもウィンドウ
2015.05.14
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