Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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新幹線騒動記
 先日、北陸新幹線が長野から金沢まで延伸され開業した。東京から金沢まで2時間30分ほどで行くことができる。開業が近づくにつれて地方経済の発展に向けた期待は日増しに膨らみ続け、開業日に至ってそのピークを迎えた。だが歓迎ムードもそこまでで、翌日からは昨日までの騒ぎがうそのように潮目は変わって波は引いてしまった。 あの騒動はいったい何であったのか。
 考えてみるに・・あるいはもはや「速いこと」、「便利なこと」、「豪華なこと」等々は、魅力ある価値ではないのかもしれない。それらはかっての価値であって、我々はいまだその価値観が健在であると思いこんでいるだけなのかもしれない。これらの価値観は近代化途上の国々にとっては確かに魅力ある価値であるに違いないが、近代化が進み利便性が飽和した国々にとってはもはや魅力ある価値ではないのではないか。
 私が住む松本市は今回の喧噪とは埒外の、言わば陸の孤島と呼ばれるような地域にある。だがこちらの「遅いこと」、「不便なこと」、「質素なこと」等々は、めぐりめぐって今では魅力ある価値に転化しているのかもしれない。
 翻って、来る2027年の開業を目指す「リニア中央新幹線」は時速500km、品川〜名古屋間を40分で結ぶという。線路延長約286kmのうちトンネルが約247kmであり、総事業費は5兆5235億円余という。今から12年後の日本社会の価値観はいったいいかなるものになっているのであろう・・期待と不安が混交した風景が眼前に広がっている。

2015.03.23


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