未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
有限に近づいた永遠
成長戦略といい、骨太の政策といい、構造改革といい・・アベノミクスはスローガンにことかかない。だが発見されるべきものがすべて発見され、書かれるべき本がすべて書かれ、描かれるべき絵がすべて描かれた現代社会において、どのような戦略と、政策と、改革があるというのであろうか。
フランスの数理物理学者、アンリ・ポアンカレ(1854年〜1912年)は永遠の時間を想定すれば、あらゆるものはいずれは出発点に戻り「同じことを繰返す」ことを数学をもって証明してみせた。世に言う「ポアンカレ循環」である。ポアンカレが活躍した時代における永遠の時間とは文字通り「行き着くことなき永遠の時間」であったであろう。だがコンピュータを土台とした現代社会における永遠の時間とは「限りなく有限に近づいた永遠」である。あらゆる変化は急速に進行し物事は瞬時に行き着いてしまう。
ひと昔前、「ネズミ講(無限連鎖講)」という商いが隆盛を極めた。ネズミ講とは市場がねずみ算式に飽和していく商売であり、商法で禁止された違法な商いである。だが今では言葉そのものが死語のごとくに忘れられて久しい。時代そのものがネズミ講の連鎖速度を超越してしまった現代では、その意味さえ失われてしまったということであろうか。
2015.01.31
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