Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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間違えた遠足
 すべての可能性が行き詰まり、未来への夢が閉ざされた現代社会はいったいどこに向かっているのであろうか。
 物理学から哲学に転向したトーマス・クーン(米国1922〜1996)は科学が絶えず真実に近づいているという考え方を否定し、著作「科学革命の構造」の中で、「科学が地球上の生命のように、何かに向かって進化しているのではなく、何かから遠ざかっているだけだ・・」と断言した。
 時代は常に最良に向かって進化しているように見えて、実は遠ざかっていることも充分にありえるのである。「現代よりも古代のほうが良かった」という追憶をいったい誰が否定できるのであろうか。
 進む方向を間違えた「遠足」の解決策は、まずは「立ち止まる」ことであり、次に「方向を考える」ことであり、わからなければ「引き返す」ことであろう。無闇に前進することだけが「勇気」でも「努力」でも「精進」でもない。前進のみを唯一の価値と考えてきた人類にとってみれば、おいそれとその解決策を受け入れることはできない。それは挫折と蹉跌を意味するからである。
 だが前進しても「輝く大地」がもはや地球上に残されていないとすれば、その選択に否応はない。

2015.01.30


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