未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
人は死して何を残すのか
虎は死して皮を残すと言われる。その鮮やかな毛皮は百年の歳月を経てもなお色あせることなく昨日まで生きていたかのようである。人は死していったい何を残すのであろう。曰く、名を残すと・・曰く、財を残すと・・。だが、どうも虎以上に誇れそうなものは見あたらない。
生涯を粗衣粗食にして渡る風のように生きた良寛和尚は「形見とて 何残すらむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみじ葉」という辞世の歌を残した。それは自然を友とした和尚が万物事象の中に残した清々粛々たる風韻の記憶である。
2014.11.05
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