社会は依然として先への道筋が見えず混沌としたままである。さまざまな経済学的理由は考えられるが、根源にあるのは物理学的な「エントロピーの増大」である。文明が発展することはそのままエントロピーの急激な増大を意味する。( 第721回
社会学的インフレーション理論)
「エントロピー増大の法則」とは何もしなくてもエントロピーは増大するというものである。この非可逆性は時間の非可逆性と対を成している。どちらも逆方向には進まない。つまり、時間は過去には進まないし、エントロピーもまた減少には進まない。エントロピーは、別名「曖昧量」とも呼ばれる。この世の万物事象は時間経過とともにカオス化(混沌化)し、ますます曖昧に、複雑に、でたらめになっていく。昨今の世相を眺めれば、その様相は歴然として観察される。かくなる様相が宇宙法則に則っているのだから「しかたがない」と言われても、おいそれとは受け入れがたい。ではどうすればよいのか・・?
期待すべきは、物理学者、イリヤ・プリゴジンが提唱した非平衡熱力学の散逸構造理論(自己組織化)である。プリゴジンはエントロピーが増大し、混沌とカオスが極限まで進行して臨界点に達すると「自己組織化」と呼ばれる再結晶化が起きることを発見した。この理論により、1977年、ノーベル化学賞を受賞している。それは生物学における「突然変異」のような現象である。例えていえば、溶液にさまざまな薬品を混ぜていくうちに溶液の濁りが突然に消えて無色透明になるような現象(混沌からの秩序)である。混乱も極まれば秩序が発生するのである。
願わくは、この法則によって雨降って地固まるがごとくに「でたらめな社会」がきちんと結晶化することではあるのだが・・・。
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