人として「死をまぬがれ得ない」とするならば精神の力が最後に残された唯一の「救いの糧」となるであろう。いつからか人は物質的な価値を追い求めることで精神的な価値を見失ってしまった。俗に言われる「誇りで飯が食えるのか」という現代人の捨て台詞がその状況をよく物語っている。確かに人が永遠に生き続けるのであれば精神の力は必要ないのかもしれない。「誇りで飯が食えるのか」はまさにふさわしい。だが誰ひとりとして死からのがれることができないのであれば「誇りで飯が食えるのか」などと悠長なことを言っていられない。まったく逆の「飯で誇りが食えるのか」とならざるを得ないのである。