日本の深夜を熱狂させたソチ冬季オリンピックが終了した。今回のオリンピックでは女子フィギュアスケートの浅田真央選手に代表されるように、メダルを取らなくても「世界から賞賛される」というかってなかった現象が生じている。フリースタイルスキー女子モーグルの上村愛子選手もまたしかりである。競技審判の採点をそっちのけにして、彼女たちが演じた「感動のドラマ」に涙したのである。
この現象をもたらした最大の原因は「情報化の波」であろう。情報化社会が進展した今、観衆はさまざまな情報機器を使って「微に入り細に入り」あらゆる情報を収集可能である。それどころかあらゆる情報が空中から降ってくる。観衆はそれらの情報の下に、選手の「一挙手一投足」を見ているのである。言うなれば「競技審判や解説者に言われるまでもなく」その競技の優劣を判定できる判断基準を備えているのである。今やその能力は「なまじの審判員や解説者を凌駕する」までに至っているのかもしれない。つまり、「金メダルは私が決めます」というわけである。
メダルにとどかなかった上村選手は「最後に自分が思い描いていた最高の滑りができました」と自らに感動し、浅田選手は「長い歳月をかけて目指してきた最高のプログラムを最高の演技で完成することができました」と自らに感泣した。観衆は自らに向けたその不撓不屈の勇気と、比類なき純心に、金メダルを捧げたのである。
かって「プロジェクトX」というNHKの人気番組があった。その中で登場人物が思わず吐露した言葉の数々が「名言集」としてのこっている。以下はその抜粋である。
「すべての開発は感動から始まる」/「美しいものを作れ、そうすれば解決する」/「挑戦者に無理という言葉はない」/「男は一生に一度でいいから、子孫に自慢できるような仕事をすべきである」/「いつかはみな死ぬ、今は苦しくても死ぬときに誰も出来ないことをやったと思えたらそれでいいじゃないか」/・・・。
どこか今回のオリンピックで活躍した選手たちの心情と相通じるものがある。本当の「レジェンド(伝説)」とは、あるいは自らが自らに与える賞賛なのかもしれない。