心の漂流(2) |
心の漂流をとどめる錨とは強い「意志」であろう。強い意志は多く刻苦の中で育まれるものである。「若いときは買ってでも苦労しろ」とは、かって日本の津々浦々で言われた箴言である。その真意は、今となれば、放置すればとめどなく漂流してしまう心を、現実世界に引き留める強い意志力の養成、つまり「錨の構築」にあったことになる。
悲しいかな現代物質文明は豊穣なる利便性社会を生み出すことで、肝心要の意志力を低下させ、結果として錨を喪失させてしまったのである。
なんとか意志力を高め、錨を手にしたとして、次には正確な位置と方位を把握するに足る「地図」と「羅針盤」の入手が待っている。人類は長い時を要して、「物」としての「錨」、「地図」、「羅針盤」を作って来た。同様に「心」としての「錨」、「地図」、「羅針盤」を作ることにもまた遥かな時を要することを覚悟しなければならないのであろう。
※)ニーチェ、ゲーテ、漱石等々は、かくなる「心の漂流社会」がやって来ることを予言していた。
ニーチェの予言 / 第636回
「末人」
ゲーテの予言 / 第619回
「科学的合理主義の終着点」
漱石の予言 / 第620回
「漱石またしかり」 |
2013.08.04 |
|