原発再稼働に向けた安全強化策とは |
原発再稼働に向けて安全強化を義務づけた新規制基準での審査が始まった。テレビニュースでは各電力会社の社員が分厚いファイルを何冊も原子力規制委員会に運び込んでいる様子を伝えている。これらの書類を作成するのも大変であろうが審査するほうもまた大変であろうと同情を禁じ得ない。それとともに再稼働に向けての安全強化策とはいったい何であろうと考えてしまう。
原発再稼働に向けて国民が期待しているものは分厚いファイルに収納された安全基準書などではなく、原子力発電所を運用管理するにたる「人材に対する信頼感」なのではあるまいか。もちろん装置の改善や安全マニュアルの改善等々が不要であるはずはないが、今国民が求めているものは、それらの装置を的確に操作し、安全マニュアルをしっかりと身につけた「人材そのものに対する信頼感」なのである。
かって旅客機のパイロットはパイロットになってからも一定期間ごとに実機に搭乗した審査官によって緊急事態における操縦能力を審査され、不適格と判定されれば地上勤務に戻されてしまうと聞いたことがある。パイロットの本当の職務(存在意義)とは、いつ何時発生するかわからない緊急事態(エマージェンシー)において、「いかに対応できるかいなか」なのである。今では、おそらく地上に設置された操縦シュミレータに搭乗、ありとあらゆる緊急事態を想定した操縦能力が審査されているにちがいない。
旅客機は99.99%(フォーナイン)の安全率をもつと言われているが、それでも最後の安全策はフォーナインで構成された航空機を操縦するにたるパイロットのゆるぎない技能に対する信頼感なのである。であれば原発再稼働に向けた安全強化策とは、「原発運転シュミレータ」を用意し、原発1基分の運転要員(管理者を含め何人になるのか筆者にはわからないが)をそのシュミレータに配置、想定されるあらゆる緊急事態に各運転員が的確に対応できるかいなかを審査することなのではあるまいか。その厳しい審査をクリアした運転要員のみが原発運転に従事することができるようにすべきであり、審査は一定期間ごとに繰り返し実施すべきであることも旅客機のパイロットと同じである。また原発運転員としての報酬はその能力にふさわしいものであることはもちろんである。
つまり、今問われている審査とは科学技術というよりも、むしろ「人間そのもの」なのである。 |
2013.07.11 |
|
|