この世は時空間と呼ばれる時間と空間で構成された世界である。今眺めている風景が「同一空間で同一時間の風景」であることを疑う者はいないであろう。では私が開発した「タイムシフトウィンドウ」と名付けられた映像表示ウィンドウをご覧ください。
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この映像表示ウィンドウでは、ある場所における「同一空間で同一時間の風景」が表示されているように見えて、実は「画面の各所」ではそれぞれ時間が異なっている。言うなれば「タイムシフト」されている。それはあたかもアインシュタインの相対性理論から導かれた「宇宙の各所」で時間が異なっているとした「相対時間」を現実に眺めているかのような不可思議な感覚をもたらす。
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今の今という刹那の時空間を我々は「リアルタイム(実時間)」で認識することはできない。それは目前で起きた突発的現象(例えば爆発や事故等)に対して、その瞬間では何が起きたのかがわからないという体験的事実を想起すれば了解されであろう。
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何が起きたかを知るのは若干後になる。頭の中で起きた現象を「プレイバック(再生)」して確認してみなければ何が起きたのかを把握することができないのである。つまり、我々の意識はひとときも休むことなく、少し前の時空間にタイムシフトしているのである。
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言うなれば、プレイバックとタイムシフトは等価的概念であり、その意味を還元すれば「再生」ということになる。この映像表示技術を「マルチ再生映像表示技術」と名付けた所以は「画面の各所がプレイバック再生された映像」で構成されているからに他ならない。 |
ドイツの理論物理学者、ハイゼンベルク(1901〜1976)は不確定性原理の中で「ある粒子の運動量と位置を同時に正確に知ることは」原理的に不可能であるとした。同様に「ある時空間の時間と空間を同時に正確に知ることは」原理的に不可能なのである。
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タイムシフトウィンドウからの眺めはそのことを如実に教えてくれているのである。
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