臨界 |
3.11東北大震災に端を発する原子炉事故が日本の空を重く覆っている。
原子力発電とは核分裂から生まれる核エネルギを電力に変換するものであるが、この中で「臨界」というメカニズムが登場する。臨界とはこの境界を越えると核分裂が際限なく継続する境目のことである。原子炉では制御棒を使ってこの臨界を厳密に制御しているのであるが、今回のようにその制御手段が失われると人為的に制御することが不能に陥る。こうなるとあとは原子炉に「水をかける」ことぐらいしかのこされていない。現代科学の粋を結集した最先端機械の事故対策が「水をかけること」とは唖然として言葉もない。
以上は科学技術の話で、以下は経済社会の話である。
つまり、経済社会にもこの臨界というメカニズムが潜在していて、日頃はさまざまな経済政策という制御棒を使って厳密に制御されている社会システムであっても、何らかの経済事故でこの制御手段が失われると、もはや人為的に制御することが不能に陥るという可能性である。この臨界は原子炉事故のようにしかと目に見えないだけにかえって怖ろしい。
混乱を極める国内外の経済状況がいまだ臨界前なのかあるいは後なのか判らないが、もし仮に臨界を越えていた場合には、原子炉同様に社会に「水をかける」ことぐらいしかのこされていない。
それはあたかも原始時代のような問題解決方法であって、古今、人類はちっとも進歩していないことになる。 |
2011.8.22 |
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