Linear 未知なる時空を訪ねる旅の途中でめぐり逢った不可思議な風景と出来事
知的冒険エッセイ / 時空の旅
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速度考

 アインシュタインの相対性理論によれば、速度が光速度(30万Km/s)に近づくに従い、時間はゆっくり流れ、光速度となれば時間は停止し、その光速度を越えると時間は逆に(つまり、現在から過去へ)流れることになる。

 しかし、これはある限度以上の速度の場合であって、私には日常での速度(例えば飛行機の速度、新幹線の速度、自動車の速度等々)では、その理論とは逆に、速度が速くなればなるほど、時間は速く流れるように感じられる。

 日常速度では速度を上げれば上げるほど、視界は狭くなり、周りからは音が消えていく・・・新幹線の車窓からは、昼寝をしているお父さんの姿や、蝉の声をとらえることはできないが、鈍行列車の車窓からは、それのみか洗濯をしているお母さんの姿や、谷川のせせらぎまで、とらえることができる・・・また車で、とある街を通過しても、その街の臭いや、笑い声をとらえることはできないが、ゆっくり歩けば、その街の臭いや、笑い声はおろか、路傍に横たわる犬猫の顔から、漂う空気まで、とらえることができる・・・・。

 現代人は速度を上げることで、多くの風景、多くの声、多くの空気、多くの・・・を失ってしまったのである。

2005.8.31

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