三島由紀夫に「行動学入門」という著作がある。
彼は「知行合一」を求める陽明学の信奉者であったと言われる。
その著書「行動学入門」の中では、行動における「思考停止」を述べる・・日本刀は鞘から抜き放たれるまでは、思考に思考される・・が、ひとたび鞘から抜き放たれるや、思考は停止し・・ふたたびその思考が復活するのは、刀身が鞘に戻ってからである・・と。
行動は「思考停止(無心)」であってこそ、「最大の力を発揮」すると言うのである。
前項の「意志力の発揚」では・・意志力は思考力と「切り離す」ことで、「自在無碍」の力を獲得するのであり、真の意志力は、思考力に対する連綿たる「未練を断ち切ったところ」に、「忽然と発揚」する・・とした。
三島はかかる思考力と意志力の連綿たる未練の連鎖を切断するに「思考停止」をもってあて、その無心運動を「行動の美学」として昇華させ、その純粋行動に殉じたのである。
知と行の連絡橋である意志力の「ひとつの風景」であろう・・・。
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