戦後に始まった日本の経済成長は30年前に、すでに終了しており、その後の成長は経済波動の「オーバーシュート(行き過ぎ)」であるとするデータがある。経済のオーバーシュートが30年間も続いたということは、とりもなおさず戦後に端を発した日本経済の成長エネルギがいかに膨大であったかの証左でもある。
時ここに至り、さしもの膨大なオーバーシュートエネルギも、遂には勢いを減衰させ、日本の経済成長が「ようやく下降線を呈し始めた」というのである。
日本経済が下降線を呈しはじめた最も大きな原因は「ものづくり」という製造産業のみに一局集中したためであろう。ものが不足している時代であれば、拡大再生産は有効に作用し、需要は順調に拡大し、ともなって製造業は発展し、結果、我々の所得水準は増大する。
だが、「もし経済成長30年前終焉説が正鵠を射ていた場合」、かかる製造産業の拡大再生産は、いかなる経済を将来するのであろうか・・?
ものはますます過剰となり、価格は低落し(言うなればデフレ)、ともなって製造産業は衰退し、結果、我々の所得水準は減少する。
現在、日本経済に起きている現象は「まさにこの状況」である。
日本経済の下降が今始まったところであるとすれば、製造産業の衰退は「これから」であることを覚悟しなければならない。また同様に、その製造産業を支えてきた土木建設産業も「ともなって衰退する」ことを避けることはできないであろう。
であれば、今後の日本に「いったい何が」残されるのか・・?
以下、私見で述べれば・・、
残されるものとは、団塊の世代と呼ばれる中高年以上の高齢者集団が、かかる戦後の経済成長下を通じて汗水垂らして蓄えてきた「虎の子の金融資産」である。
この金融資産は、1000兆円以上と言われ「世界一」を誇る。今後の日本経済に残された唯一の成長機会(チャンス)は、この1000兆円の金融資産の「有効利用」に賭けられるであろう。
有効利用と言っても、超低金利に甘んずる日本国内で運用されることはないであろうから、運用されるとすれば「グローバル市場」においてとなる。従って、円はドルに、ユーロに、ポンドにと変換されることになる。
もし日本国内に蓄積され、長らく眠っていた1000兆円の金融資産が、ある日突然、かかる有効利用に目覚め、ドルや、ユーロや、ポンドに変換された場合、いかなることが発生するのか・・?
「超円安」である。
かって、戦後の経済成長過程で、1ドルが360円から90円の「超円高」に移行したことの対極の流れが起きることになるが・・・それから先は、日本経済の「未体験領域」となり、かいもく予想することは困難である。
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